home > 協会コラム > 賃貸経営

賃貸経営

『サブリース新法を考える』 サブリース制度を再確

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、サブリース新法という)」が令和2年6月に国会で成立し、令和2年12月15日から施行されることを皆さんご存じでしょうか。

このサブリース新法の概要についてみていきましょう。

 

 

 

1.「サブリース新法の背景・必要性」

共同住宅(アパート)を建築する際に、「空室が出ても家賃を保証する」といったサブリース方式での一括借り上げを前提に建物の請負契約を締結するケースも多く存在します。

その際に、オーナーとサブリース会社との「家賃保証」の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題化したことが背景にあります。投資用のアパート・マンションでもサブリース賃料の未納問題、サブリース契約が解約できない等のトラブルも増えています。

そこで、所有者とサブリース業者とのトラブルを未然に防止する目的で作られたのです。

 

トラブルの代表例としては、

①「サブリース契約を締結後、5年間は当初約束された賃料が入っていたが、6年目に当初約束の家賃からの20%減額を言われた」

 

②「20年の一括借り上げと言われていたが、サブリース会社から一方的に中途解約された」

 

③「サブリース(家賃保証)付きの投資用1Rマンションを購入したが、中途から家賃が入らなくなった」

 

2.「サブリース新法の内容」

(1)不当な勧誘行為の禁止

サブリース業者・勧誘者による特定賃貸借契約(マスターリース契約)勧誘時に、家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げず、又は不実を告げる行為の禁止

【例示】

家賃減額リスクや、契約期間中のサブリース業者からの契約解除の可能性、借地借家法第28条の規定によりオーナーからの解約には正当事由が必要であることについて伝えず、サブリース事業のメリットのみを伝える。

 

(2) 誇大広告等の禁止

マスターリース契約の条件について広告するときは、家賃支払、契約変更に関する事項等について、著しく事実に相違する表示、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示を禁止

【例示】

「家賃保証」「空室保証」などの文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合にその旨及び借地借家法第32条の規定により減額されることがあることが表示されていない

 

(3) 特定賃貸借契約締結前の重要事項説明

マスターリース契約の締結前に、家賃、契約期間等を記載した書面を交付して説明

【例示】

説明すべきリスク事項

○家賃が減額される場合があること

家賃の定期的な見直しがあり、見直しにより家賃が減額する場合があること

・契約条件にかかわらず借地借家法第32条第1項に基づきサブリース業者が減額請求を行うことができること

(ただし、家賃が、経済事情の変動により不相当となったとき等借地借家法上の要件を満たさない限り、減額請求はできないこと)

・オーナーは必ずその請求を受け入れなくてはならないわけではなく、変更前の家賃決定の要素とした事情を総合的に考慮した上で、協議により相当家賃額が決定されること。

 

○契約期間中に解約となる場合があること

契約期間中でも、サブリース業者から解約される場合があること

・借地借家法第28条に基づきオーナーからの解約には正当事由が必要であること

 

(4)違反者への罰則

違反者には、「6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」などの罰則規定、業務停止命令等の行政処分が設けられました。

この法律によって、サブリース問題の発生抑制につながることを期待したいと思っております。

 

 

 

3.「すでに締結済みのサブリース契約を見直してみる」

すでにサブリース契約をしており、毎月送られてくる収支明細の内容をチェックしていない方も多いと思いますが、以下のポイントをチェックしてみてください。

 

①保証賃料から控除されている管理費等がある場合

⇒「家賃保証されているが、実際のオーナーへの入金額が思ったより低い」と感じていませんか。この要因としては、保証家賃から管理費等の名目で控除されているのではないでしょうか。そもそも、保証家賃は実際の相場賃料の85%~90%程度に設定されていると思いますが、さらに管理費等の名目で5%程度引かれていると、実質的に相場賃料の80%~85%が入金されることになりますので、「思ったより、入金が低い」ということになります。

 

②転借人(入居者)の退去時に高額の原状回復費・修繕費が引かれる。

⇒転借人が入れ替わるたびに、原状回復費、修繕費等が控除され、入居者の入れ替え月に入金額が少ないことも多々あると思います。

転借人(家を借りてる人)が本来であれば負担すべき原状回復費用を、転借人に請求せず、オーナーに負担を求めている事例もあります。

また、サブリース会社は、自社のグループ会社に「リフォーム会社」があることが多く、修繕にあたっては、その関連会社が工事をすることになりますが、その修繕費が一般の工事会社よりも高額になるケースがあるのです。

 

③サブリース契約の解除に多額の違約金が設定されている。

⇒サブリース契約を解除させないために、多額の違約金が設定されている場合があります。息子さんにアパートの事業承継をする際に、サブリース契約を解除したいがどうすればよいのかといったご相談も多く寄せられています。

 

4.まとめ

サブリースの利点は、「空室が出ても収入が安定する」とありますが、上記ポイントに該当する場合には「実はサブリースによって、オーナーの収入が、通常のアパート経営よりも少なくなる可能性が高い」ことになります。

つまり、空室時における家賃収入減よりも、サブリースによる賃料収入の方が低いことも多く見受けられ、サブリースをしていることのメリットは少ないのではないでしょうか。

よく、「大手不動産会社だから安心」、「銀行が融資しているから安心」との観点から、安易にサブリースを決断してしまうことが多いように思います。

本当に検討しなければならない重要なポイントは、

「この場所でのアパート賃貸経営は中長期的に安定稼働していくのか」

「将来的に賃料下落リスクがどの程度あるのか」

「他の競合アパートと比較して、自身のアパートは競争力があるのか」

等を検証して、第三者の専門家の助言も聞きながら、本当にサブリースで大丈夫なのか、このアパート建築は正しいのか判断していくことが重要です。少しでもご不安に思われる方は、お気軽に当協会までご相談ください。

 

(著者:手塚)

 

ご相談窓口

まずは、お電話、お問い合せ・ご相談フォームより、お越しいただく日程を決めさせていただきます。
※東京近郊にお住まいの方は、協会事務所までお越しいただき、詳細に相談をお受けいたします。

お電話でのご連絡

  • 新宿本部

    03-3320-6281
  • 横浜オフィス

    045-620-3701

お問い合せ・ご相談フォームからのご連絡