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賃貸経営

「民法改正を考える」その4

1 はじめに

これまで3回に渡り、民法改正に関する事項を取り上げてきましたが、今回も民法改正に関する事項を取り上げたいと思います。今回は、改正法の適用時期と経過措置をメインとし、更新契約における留意点にも触れたいと思います。

 

2 改正法の適用時期と経過措置

改正法が適用されるのは、改正法の施行日である2020年4月1日以降となりますが、原則としては、同施行日以前に締結された契約関係等においても、改正法が適用されることになります。

ただし実際には、改正法の施行日以前に締結された契約関係等について、改正法附則において経過措置がとられている場合が多く、賃貸借や借地借家問題への影響の大きい保証制度についても経過措置がとられています。

具体的には、改正法の「施行日前に・・・賃貸借・・・が締結された場合・・・については、なお従前の例による。」とか、「施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。」とされており、結果、改正法の施行日までに締結された賃貸借契約や保証契約については、現行法(旧法)が適用されることになります。

 

3 更新契約における留意点

以上のとおり、改正法施行日以前に締結された賃貸借契約や保証契約については、現行法(旧法)が適用されることになりますが、改正法施行日以前に締結された賃貸借契約が更新された場合の取扱いについては、留意が必要です。

更新契約の性質については、新規の契約になるのか、あくまで従前の契約の延長となるのか議論の余地あるところですが(特に法定更新の場合)、賃貸借契約において合意更新がなされた場合には、新規の契約が締結されたと考えるのが通説的といえます。そのため、賃貸借契約に関して改正法施行日以降に合意更新がなされた場合は、経過措置の適用はなく、あくまで改正法が適用されると考えるべきことになります。

その場合、賃貸借契約自体への影響も無いわけではありませんが、保証契約への影響が特に大きいといえます。、改正法においては、個人保証人保護の観点から、個人による根保証全般について「極度額」(保証額の上限)を定めることが義務付けられ当該義務に違反した場合は保証契約自体が無効とされる等の規定が設けられており、改正法が適用となった場合の影響は非常に大きくなります。

ただしこの点に関しては、合意更新の方法如何により、その影響を回避する余地があります。具体的には、現行法(旧法)適用下における賃貸借契約に関する保証契約において、契約更新後の債務も保証する旨の定めがなされている場合には、改正法施行日以降に賃貸借契約の合意更新がなされ賃貸借契約自体には改正法が適用される場合でも、保証契約については現行法(旧法)が適用されることになります。この点注意が必要なのは、賃貸借契約の合意更新に際して、(連帯)保証人も合意更新契約に加わって署名押印を行ってしまうと、保証契約についても改正法が適用されることになると考えられることです。

そのため、賃貸借契約に関する保証契約において、契約更新後の債務も保証する旨の定めがなされている場合には、改正法施行日以降に賃貸借契約の合意更新をするに際し、(連帯)保証人が合意更新契約に加わる(署名押印を行う)ことのない方が、賃貸人にとって有利ということになります。

 

(著者:弁護士 濱田)

 

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