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資産活用

アパート建築で考えなければいけないもう1つの視点

「遊休地にアパートを建築すると、収益が上がる、土地の相続税評価が引き下げられる、土地の固定資産税が軽減される。土地所有者にとって多くのメリットがあります。だから建築しましょう。」と、建築メーカーの営業トークのイロハのイです。昨今では、供給過剰の問題やらサブリースの問題やらが注目を集めており、より慎重に検討している土地所有者の方も多くなってきたと思いますが。もう一つ、考えなければならない大事な問題があります。それは、建築することによって土地の価値が大きく変わるということです。土地の価値とはいわゆる時価、換金価値のことです。

 

遊休地(ここでは更地や駐車場なども含めて考えます)の換金価値は、周辺相場や路線価や公示価格によってある程度は把握可能です。要するに遊休地の時価は非常にわかりやすいのです。しかし、遊休地にアパートを建築すると、その換金価値の考え方はどうなるでしょう。一見、土地の時価(更地価格)に建物の価格(建築価格)を加えたものが、その不動産の価値とも考えられそうですし、理屈の上では間違ってなさそうです。しかし、アパートが建築された土地建物の価格は、その不動産(アパート)からどれくらいの収益が生まれるか、その収益をもとに不動産の価値を算定するという収益還元価値という考え方に変わるのです。この考え方は近隣の土地相場というのはあまり参考になりません。あくまで土地建物を一体として、そこから生まれる収益を逆算し、売却可能な想定利回りは何%か、という投資商品としての換金価値というまったく別の考え方にかわるのです。

 

例えば、更地としての時価5000万円の土地に5000万円のアパートを建築し、家賃収入が年間500万円と仮定します。建築後すぐに売却する場合の利回りが5%(5%で買主が現れた)とすると、その不動産(アパートと土地合計)の収益還元価値が10,000万円となりますが、10%ですと、5000万円、7%ですと約7142万円となります。建築資金に5000万円投入しておりますので、それを差し引いた価格が土地の価値となりますので、このケースですと利回り5%で売却できれば土地の価値は更地の場合と変わりませんが、それ以上の利回りでなければ売却できないとなると、土地の価値は更地価格より下がってしまうのです。

 

要するに建築価格とそこから上がる収益によっては、不動産の価値の考え方が変わり、更地の場合の土地の価格より、上がることもあれば下がることもあるということです。このような観点でアパート建築計画を検証してみますと、多くの場合はアパート建築から数年は土地の価値が下がっていることに気がつきます。

これが良い、悪いではなく、遊休地にアパートを建築する場合は、建築後の換金価値と、更地としての価値を比較して考えること、近い将来、売却せざるを得ない状況が想定される場合には、もっとも売却しやすい更地(または制約の少ない駐車場など)の状態で維持すること。アパートを建築する場合は、その不動産は売却しない、少なくとも建物資金を回収するまで(借入金の返済が完了するまで)は売却しない、と決めること。が大事なポイントです。

 

事業収支や相続税の評価減、固定資産税の軽減も検討の材料ではありますが、もう一つ、建築後の換金価値という視点も含めて今一度、土地活用を検討してみてください。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

 

 

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