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底地・借地権

新・借地借家を巡る諸問題⑩_賃借人の破産

1 はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行に終息の兆しが見えない中、様々な業種への影響はより深刻化し、事業者が倒産に至るといったケースも出ています。また、事業者の倒産により失業した個人が、各種ローンや家賃等の支払いに窮するといった事態も生じています。

 

事業者が倒産したり、個人が各種ローン等の返済に窮して破産等をすることになった場合、そうした事業者や個人を賃借人とする賃貸借契約には、どのような影響が生じるのでしょうか。

「倒産」には、法律上明確な定義がある訳ではなく、事業者の経営破綻状態を広く含みますが、今回は、賃借人たる事業者や個人(非事業者)が「破産」した場合の賃貸借契約への影響について、整理したいと思います。

 

 

 

 

2 賃貸借契約の帰趨

⑴ 事業者破産の場合

賃借人が破産した場合、賃貸借契約の帰趨は、破産法により規律されることになりますが、破産法上、賃貸人が賃借人の破産を理由として、直ちに賃貸借契約を解除することは、認められていません。

事業者破産の場合、裁判所により破産管財人が選任されるのが通常ですが、賃貸人には、破産管財人に対し相当の期間を定めて、賃貸借契約の解除と継続のいずれを選択するのか催告することが認められており、当該催告期間内に破産管財人から確答がない場合には、賃貸借契約は解除されたものとみなされます。そのため、賃貸人側で、破産した賃借人との賃貸借契約の解除を希望する場合には、破産管財人に対して当該催告をしてみることになります。

なお、賃借人に賃料未払等の契約解除事由が別途存在する場合には、破産手続が開始されても賃貸人からの契約解除は特に制限されるものではなく、賃貸人からの契約解除は可能ですが、賃貸借契約上賃借人の「破産」が解除事由と定められている場合でも、裁判実務上は、単に賃借人の破産のみを理由とした解除は認められないのが通常です。

他方、破産をした賃借人側からも、破産管財人が賃貸借契約を解除するか裁判所の許可を得て継続するか、いずれかを選択することが認められているため、賃貸人側から賃貸借契約の解除か継続のいずれを選択するのか催告しなくても、破産管財人から賃貸借契約が解除される場合もあります。

 

⑵ 個人(非事業者)破産の場合

賃借人が個人(非事業者)の場合、居住用の建物賃貸借契約等については、裁判実務上、自由財産に関する契約関係として、破産管財人による換価処分等の対象とはされず、破産管財人からの賃貸借契約解除は行われないのが通常です。

また、個人(非事業者)の破産手続では、そもそも破産管財人が選任されない場合も少なくなく、そのような場合には、賃貸人側からも賃借人側からも、破産法に基づく賃貸借契約の解除は認められません。

なお、破産管財人が選任されない場合でも、賃借人に賃料未払等の契約解除事由が別途存在する場合には、賃貸人からの契約解除は特に制限されず、賃貸人からの契約解除は可能です。

 

3 賃料等の取り扱い

賃借人の破産手続開始決定前に生じた未払賃料等は、一般の破産債権として取り扱われ、他の債権者に対して優先することはできません。

ただし、敷金や保証金がある場合には、未払賃料等は敷金等で担保されることになり、敷金等による担保機能は賃借人の破産の場合でも特に制限されるものではありません。

他方、破産手続開始決定後に生じた賃料等は、破産手続上、財団債権として形式上は一般の破産債権に優先することになりますが、賃借人に弁済原資となる財産(破産財団)がなければ、結局は、賃貸人は弁済を受けられないことになります。

 

(著者:弁護士 濱田)

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