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相続

良い遺言と悪い遺言

◎自筆証書遺言の保管制度がスタート

7月10日から法務局による自筆証書遺言の保管制度が始まりました。

これまで自宅で保管されることの多かった自筆証書遺言を、1件につき3900円で法務局が預かってくれる制度です。

自筆の手軽さに加えて、「紛失や隠匿が防止できる」「家庭裁判所による検認手続きが不要になる」といったメリットが付加される形となりました。

 

 

◎遺言を書かない理由は?

新制度の導入で遺言が注目されそうな一方で、「遺言なんて必要ない」とおっしゃる方もまだまだ多いもの。長子相続の家系だからという理由の方も中にはいますが、多くの方は次の2つの理由を挙げるように思います。

 

①大した財産はないから(自分が死ぬまでに使い切る)

②家族(相続人)の仲が良いから

 

これらを否定するつもりはありませんが、本当に「遺言なんて必要ない」と言い切れるかどうか、申し添えておきたいことはあります。

まず、ご自身が亡くなるまでに財産を使い切るのはなかなか難しいことです。長生きする可能性に備えて介護・療養費用を工面しておく必要性を感じ、いざとなると思い切った消費ができない方がほとんどだからです。

 

次に、ご家族の仲が良いのは素晴らしいことですが、万一があったときに、全員が健康でいるとは限りません。

もし相続人のどなたかが意思表示のできない状態になったとすると、その方自身は遺産分割協議には参加できず、代理人が参加することになります。代理人は本人の権利を最優先しますので、それが必ずしも家族の利益に一致するとは限りません。いくら仲が良くても、その良さが発揮できない事態があるかもしれないということです。

 

◎「最後の意思表示」が複数あると危険

 

 

遺言に積極的な方にも注意点があります。

自筆証書・公正証書の区別なく、遺言が複数出てきた場合は日付の新しいものが有効とされます(内容が抵触しない部分は古いものも効力が認められます)。

しかし、いくら法律上そうだといっても、古い遺言を支持する相続人にとっては、はいそうですかとすぐに納得できるわけではありません。いらぬ疑義を残さないためにも、新しい遺言を作ったら古い遺言は破棄するのが賢明です。

また、思わぬ伏兵がエンディングノート。エンディングノートは法律上有効な遺言ではありませんが、財産の分割方法などが書いてあれば、家族にとっては立派な「遺言」です。ましてやその日付が最も新しかったりすると…。

 

◎「良い遺言」とは

遺言を書くのに腰が重い親御さんと、書いてほしいお子さん。相続対策するべきなのに親子の歯車が噛み合わない。そんなご家庭は、「相続より前に親御さんに起きること」から話し合ってみてはいかがでしょうか。

当コラムでも何度も言っていますが、多くの場合、いきなり相続は始まりません。相続の前に介護生活があり、私の経験上、相続トラブルの発生原因第1位が介護です。「介護を語らずして相続を語ることなかれ」です。

 

親御さんとしても、ご自身の身の上に起きることを整理して、その間に子どもたちから受けるサポートをイメージしてみると、自然と「メッセージを残しておかなければ」とならないでしょうか。

その延長にあるのが良い遺言だと思います。気力のいる作業ではありますが、お正月で家族が集まりやすくなるこの時期は親子の話し合いに良いタイミングです。

死後ではなく生きている間の将来のこと。まずはそこから考えていきましょう!

 

(著者:税理士 高原)

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