コメと住宅価格、上がる理由と今後の見通し
コメの値段が上がった、下がったと連日大騒ぎの7月でしたが、7月1日に公表された今年の路線価も上昇しました。
4年連続の上昇となり上昇率も過去最大です。もちろん上昇率のトップは東京、次いで沖縄、福岡とのことです。
地価上昇の大きな原因は、観光や再開発などによって人が多く集まることによる土地の利用価値の上昇です。

土地に限らず、建物の建築費も年々上昇しており、一般財団法人建築物価調査会が毎月発表する建築費指数によると2015年を100とした場合に、2025年時点では約140と約40%上昇しています。おもな原因としてあげられるのが建築資材と人件費の上昇です。
この傾向は今後も当分続き、建築費は下がる要素がないというのが実態ではないでしょうか。
このように土地建物の価格は上昇し、多くの人にとってマイホームの夢は遠のき、場所や広さなどの希望条件を下げたり、無理をしてローンを組んだり、まさに、いつか来た道のようです。住宅供給側のディベロッパーも決して暴利を貪ろうというのではなく、土地の仕入れ価格も建築価格も上昇している現状では、それを住宅に価格転嫁するよりほかありません。それでもなんとか売れているうちは大丈夫ですが、売れなくなってきたら大変です。もちろん場所によって住宅相場は異なりますが、仮に土地30坪、建物30坪8,000万円がそのエリアの適正相場とすると、土地建物の価格の上昇分を転嫁するために、総額の8,000万円は変えずに、土地25坪、建物25坪と、規模を少し小さくする。という、いわゆるステルス値上げをせざるを得ない状況です。
しかし、ステルス値上げにも限度はありますので、総額8,000万円で販売するためには最終的に原価を見直す必要がでてきます。住宅の原価は土地と建物ですが、建物価格は前述のように人件費や原材料費のことを考えると原価を下げることは現実的に難しいでしょう。
となると最後は土地の価格をいかに抑えるか、適正価格で購入するかが鍵となってきます。すなわち今後は総額8,000万円の内訳が土地4,000万円、建物4,000万円だったものから、建物価格の上昇により建物5,000万円、土地3,000万円としなければ適正相場である総額8,000万円にはならなくなるのです。それを考えると大都市部などの一部特殊地域をのぞくと土地価格は落ち着く、もしくは建物価格がまだまだ上昇することを考えればむしろ下がることも大いに想定できます。
もちろん土地価格、建物価格の上昇と同等か、それ以上に国民の所得が上昇すれば、住宅価格の上昇も吸収でき、負担感は大きくなりませんが、現状はなかなか追いついていないようです。給料は上がったけど、それ以上に物価があがっている、社会保険料などの上昇により手取りが増えない。など、目の前の現実は厳しいようです。
コメの値段も住宅の値段もモノの値段は原則、需要と供給のバランスによって変化します。コメの値段が落ち着くにはマスコミがひとこと「いまコメは高いので値段が落ち着くまでパンにしましょう。」というだけで大分値段は落ち着くと思います。住宅も買う人がいなければ価格を下げざるを得ません。しかし、生産者や従事者のことを考えると何でも下がれば良いわけではなく、値上げを受け入れた上での適正利益、適正配分が望ましいといえます。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)