「足元を見る」とは、相手の弱点をみつけて付けこむ、という意味です。

テレビドラマのビジネス交渉などのシーンで「足元を見てきやがったな」と、主人公が苦虫を嚙み潰したような顔をする場面が頭に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

 

 

言葉の由来は、むかし、宿屋や籠屋が、旅人の足元から、草鞋が擦り切れていたり、汚れていたり、足元がおぼつかないほど歩いて疲れ切っている様子を見て、高額な宿賃や籠賃を吹っかけるという、まさに相手の弱みに付け込むということからきた言葉です。狡猾な感じで、あまり良い意味でつかわれませんね。

 

とはいいながら世の中の商売は、大なり小なり「相手の足元をみる」ことが基本になっています。

それが露骨かどうかで今後の取引に与える影響や信用が変わってくるのだと思います。

特にコロナ禍においてはマスク不足や消毒薬不足を足元に見た高額販売などが横行しました。あまりに露骨すぎますが、購入者がいるから成り立っているのも事実です。

 

不動産業界もやはり足元を見る商売です。

足元を見るといっても販売価格の決まっている住宅やマンションを購入しようとしているお客様の足元を見て値段を吊り上げることはできませんが、事業者とは反対に、購入希望者は意識せずとも売主の足元をみて、少しでも安くならないか価格交渉するのはもはや当たり前になっているようです。

不動産の売買の場合は、売主、買主互いに足元を見ながらも条件が合わなければ取引不成立となり、他をあたることになりますが、賃貸の場合はなかなかそうもいきません。

特に既に契約を継続している貸主借主間の契約更新や、再契約における賃料の条件については互いに足元を見られたくないものです。オーナーは、テナントに出て行ってほしくない、もしくは出て行ったとしても直ぐに条件の良いテナントがみつかる。または、テナントが儲かってそうかどうかも賃料の改定の判断材料となります。

テナントはその反対で、うちに出て行ってもらったら困るだろうと考えれば強気の減額交渉になるかもしれません。特にコロナ禍では営業自粛要請などにより店舗や事務所がおしなべて苦戦しております。言葉は悪いですがオーナーの足元を見て賃料の減額や減免が多く行われています。この状況がしばらく続くとも考えられませんので、コロナ禍が落ち着いて、お店も会社も元気になったらその時はテナントの足元をみてそれなりに賃料を増額してもらえばいいのです。

住宅も考え方は一緒です。少し家賃を上げても引っ越しはしないだろう、とか、逆に出て行ってもらいたくないから家賃は据え置きもしくは少し減額しようとか、感覚としては高額な賃料のほうが賃料の増額が受け入れられやすい傾向が見られます。高額帯の住宅は、住環境さえ気に入っていれば多少の賃料の増減は気にしない傾向にあるようです。

 

このように特に賃貸事業では相手の足元を見て機動的に条件改定することが経営の良し悪しを左右することになります。

相手の足元を見るとは、まさに相手を日ごろから良く観察することです。観察の過程で相手の弱点をみつけたとしても、露骨に相手の足元をみるような態度だけは慎みたいものですね。

「足元を見る」やはり気持ちのいい言葉ではありません。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)