不動産は今が買いか、今が売りか、今後どうなる。

この手の話題は業界内外では時候の挨拶のようなもので、これからも無くなることはないでしょう。

 

 

もちろん先のことは判らないにしても、金利動向や、需給環境、税制法制、インフラの整備など、経済社会情勢でなんとなく予測がつくものです。少し前の話題では、東京オリンピックをピークに不動産は下がるだろう、空き家が増えたので下がるだろう、金利が上昇しそうなので下がるだろう、いやいや建設費が上がっているので上がるだろう、外国人が買いに来ているので上がるだろう、など上がる理由も下がる理由も探せばたくさん出てきます。

しかし市場というのは恐ろしいもので、予想を裏切って上がったり、下がったりするものです。やはり、無責任に、今が買いだ、今が売りだということはいえません。 もし、言えるとすれば、本人が買いたいときは買いであり、売りたいときは売り、ということになるでしょうか。

 

さて、とはいいながらも、それは絶対に今買っておいた方が良い、という不動産もあります。例えば隣の土地が良い例です。

隣の土地を購入することによって土地の形が良くなるというのはもちろんのこと、隣の土地を購入することによって間口を確保することができ、建築が可能になったり用途の幅が広がったりする場合は、借金してでも絶対買っておいた方が良いという典型例です。

 

また、第三者から土地を借りて建物を建築している借地権付き建物の場合、その借りている土地(底地)も買った方がよい不動産です。購入することにより完全な所有権となり資産価値が上がるのはもちろんのこと、地代や、更新料、承諾料の支払いが無くなり、何より地主との人間関係から解放されるというのは大きなメリットです。機会があれば是非とも購入したい不動産です。

 

反対に、地主の立場に立てば、貸宅地は売らない方が良い不動産と言えます

建物のように老朽化はしませんし、管理の手間はかかりません。安定して地代は入ってきますし、20年、30年に一度はまとまった更新料を受領できます。借地人が建物を建て替える場合や借地権を譲渡する場合は承諾料を受領することもできます。借地人が借地権を譲渡しようとする場合には、第三者への譲渡を承諾せず、比較的安価に借地権を買い戻して資産価値を上げることも可能です。したがいまして、底地は売却しない方が良い不動産と言えます。

このように、底地、借地の関係で見ますと、借地人は買った方が良い、地主は売らない方が良いということになり一見して相矛盾しているようですが、別の見方でとらえると、相続税の支払いなど、地主が何かしらの事情で貸している土地を売却しようと考えた場合に、借地人に働きかけると、ほとんどの借地人は土地を購入してくれるという事です。

やはり、向かう先は貸し借りの解消です。貸しは作っても借りは作りたくないものですね。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)