「修繕費は発生した時しか経費にできない」——そんな常識を覆す制度が始まっています。
行政と粘り強く交渉し、地主・家主の目線に立って制度を築いた、全国賃貸住宅修繕共済協同組合の理事長・高橋誠一氏。日本の住まいと暮らしをより良くするため、制度の“これまで”を変えていこうとする情熱が伝わる対談です。
手塚) 大規模修繕工事のために備えるお金が、経費になる制度があるとのうわさを聞きつけて伺いました。地主・家主の皆様にとって本当に良い制度だと思いましたので、詳しく教えてください。まずは、「全国賃貸住宅修繕共済組合(以下、共済組合)」について教えてください。
高橋) この共済組合は、「全国賃貸管理ビジネス協会(賃貸管理会社の団体)」が中心となって設立したものです。賃貸住宅は、将来的に大きな修繕が必要になります。そのため、アパートオーナー様があらかじめ修繕資金を計画的に準備しておける制度をつくることが、この組合の目的です。また、拠出した資金は経費(損金)として処理できるため、税務上のメリットもあり、無理なく修繕費を準備することができます。
手塚) 素晴らしい取組みです。これまで私は、修繕工事の費用は「工事を発注し、完了したあとに」経費として計上できるものだと思っていました。ところが、この制度では将来の修繕に備えて準備しておくお金を、毎年の経費として処理できるというのです。まさに目からうろこの発見でした。
高橋) この共済制度を、経費として認めてもらうまでには、実はかなり苦労がありました。もともと国土交通省も国税庁も、「アパートの修繕費用は、実際に工事を発注して完了した時点でなければ、経費としては認めない」という立場だったのです。しかし、10年や15年に一度、大規模な修繕工事…