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Q&A

賃貸経営

原状回復

  • Q.アパートを貸していますが、一人暮らしの高齢者が亡くなりました。家賃の滞納分や原状回復でかかる費用、部屋の荷物などは誰に請求すればいいでのしょうか?

賃借人の権利や義務などは、賃借人の相続人が相続します。そのため、家主さんは相続人に対して、賃貸借契約の解除をする必要があります。(トラブルにならないよう書面で交わします)
また、未払いの家賃などの請求、家財などの荷物(残置物)の引取りも相続人に対して要求することができます。
そのため、相続人が誰かを確定する必要があります。

相続人が分からない場合
実際は、連帯保証人が親族であるケースが多いですが、そうでない場合などは以下のように対応します。
*警察や病院に連絡してもらう
単身者で死亡した場合、警察や病院と関わるケースが多いため、警察や病院に、家財などの処分について聞きたいので、こちら(家主や管理会社)に連絡して頂くように伝えて頂きます。
*亡くなった賃借人の戸籍謄本などで調べる
戸籍謄本などを取ることができるのは、本人やその配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られます。そのため、弁護士、司法書士、行政書士などに依頼し、職権で取得して頂きます。

相続人が複数いる場合
誰に請求するのかは、遺産分割協議の前か後かで異なります。
*遺産分割協議前
賃料の支払い債務は、分割することができない「不可分債務」となりますので、相続人全員に帰属すると考えられます。分割できないのですから、相続人全員に対してそれぞれ全額請求することができます。(法定相続分の割合とは関係ありません)
*遺産分割協議後
遺産分割協議により、部屋の賃借権を誰が相続するか決まるため、その相続人に対して請求します。

相続人がいない場合や相続放棄した場合
賃借人の権利や義務を相続する人がいないということになります。しかし、だからといってオーナーさんが勝手に残置物などを処理することはできません。
*相続財産管理制度
民法では「相続財産管理制度」という制度があります。相続人がいることが明らかでない場合に利害関係人等(ここでは家主を指します)の申立てにもとづいて、家庭裁判所が相続財産管理人を選任する制度です。通常は弁護士が選任され、相続財産の管理、清算などを行います。(相続財産に残余があれば国庫に帰属することになります)賃貸借契約に関する未払い家賃の清算や残置物の処理なども、相続財産管理人と交渉します。
しかし、この相続財産管理制度は、手続きの終了までに10ヶ月ほどかかることや、相続財産の中で容易に換価できる資産(預貯金等)が少なくとも100万円以上ない場合は、相続財産管理人の報酬や調査費用等に費消する金員として100万程度の予納金の支払いが必要になることなどから、あまり現実的に利用できる制度ではありません。

*相続財産法人に対する訴訟提起
被相続人(亡くなった賃借人)の相続財産がまとめて法人化され、この法人格を付与された「相続財産法人」を被告として訴訟提起する方法もあります。この法人には代表者がいないので、特別代理人の選任を裁判所に申請し、特別代理人が対応することになります。尚、この選任申立ては、裁判所に10万円程度の予納金の支払いを命じられます。
また、通常は相続財産管理制度より短期間で終了します。

これらの手続きは複雑で専門的なため、弁護士に依頼することが一般的ですが、現実的な解決方法ではありません。
オーナーさんにとっては負担が多いため、このようなことにならないよう、入居時の連帯保証人の身元や資力はきちんと把握しておく必要があります。今後の民法改正により、個人保証ではなく保証会社を利用するケースが増えることが予想されますが、個人の連帯保証人を入れて賃貸借契約を締結する場合はご注意下さい。
尚、最近では、入居者が亡くなった時の清掃費や原状回復費、空室期間分の逸失賃料などを補償する少額短期保険や家賃債務保証会社のサービスもありますので、こちらもご検討下さい。