前々回に、お金に関する知識や能力である金融リテラシーを高めることで、財産を守ること、運用することの素養を身につけることが可能となり、不動産においても賃料収入を目的とした現物の不動産投資をはじめ、賃料収入を裏付けとした上場REITや小口化商品などの広がりにより、金融リテラシーがより求められるようになってきたという話をしました。

特に不動産はその特性を理解しなければ上手な運用はできないことから、今回は不動産のもつ特性の基本について、もう少し具体的にお話しします。

 

 

 

 

まず、不動産は投資した金額、すなわち元本が保証されておりません。

その分、元本が保証されている預貯金と異なり、利回りが高くなります。これは元本変動のリスクを利回りで補っているような考え方です。不動産に限らず投資商品の基本は、リスクが低ければ利回りは低く、リスクが高ければ利回りが高くなるという関係です。不動産の元本が保証されていないという事は、将来、売却したときに、投資した金額より下回り損失を被る場合もあれば、反対に投資した金額以上で売却でき、利益を得られる可能性もあるということです。

 

例えば、不動産価格の上昇が期待できない地方都市の場合は元本割れのリスクが高いので利回りが高くなりますし、反対に不動産価格の上昇が期待できる都市部の場合は元本割れのリスクが低くなりますので利回りは低くなります。値上がりが顕著な都心部のマンションがいい例です。

地方都市と都市部の不動産価格と利回りについて述べましたが、不動産の収益の源泉である賃料についても同じことが言えます。賃料が下落傾向である地方都市と、賃料が上昇基調である都市部との違い、また、空室になった場合に新たな借主が見つかるまでの期間などの違いなど、都市部と地方都市では抱えるリスクが大きく異なります。必然的に地方都市の不動産は利回りが高く、都市部の不動産は利回りが低くなります。このようなことから不動産は保有する場所によって必然的にリスクと利回りが異なるということが言えます。

 

また、不動産は保有しているだけで費用が発生するという特徴があります。

代表的なものは固定資産税・都市計画税です。共同住宅などの場合は共用部分の水道光熱費や清掃費、設備点検などの保守管理費などがかかります。これらは収益が発生しようとしまいと常に発生する費用となります。さらに建物は時間の経過とともに劣化し、価値が減少していくということから、そもそも元本は保証されているどころか、投資金額が時間経過とともにゼロに向かって減少していきます。その過程では修繕の費用が発生しますし、設備なども更新の必要がでてきます。そして最終的には建て替えるための再投資の必要も生じます。

このような建物の特性を考えれば、築年数が経過した建物はリスクが高い、すなわち利回りが高く、築年数が浅い建物はリスクと利回りは低いと言えます。

 

今回は不動産投資を元本という視点で話しましたが、リスクと利回りの関係の基本を踏まえ、この物件はなぜ利回りが高いのか、低いのかという理由を考える癖をつけることが不動産リテラシーを高める一歩となるでしょう。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)