物の値段があがり、サービスの値段が上がり、賃金が上がり、株価が上がり、金価格が上がり、マンション価格が上がり、土地値が上がり、建築費が上がり、賃料が上がり、金利が上がり、という、所謂インフレの世の中になってきました。

インフレになると現金の価値より物の価値が上がる速度が速くなるため、少しでも余剰金を持っている人たちは、現金より金、株、不動産と実物資産に運用形態をシフトしています。また、今年から始まった新型NISAもこれらの資産高に影響を与えています。

 

 

 

不動産についても、ここ数年は上昇基調が続いており、これから先も上がるのか、いや、そろそろピークアウトか、と不動産の運用を検討している人にとっては動向が気になるところです。

不動産価格の上昇により、収益不動産の投資利回りも年々低くなってきているため不動産投資という観点では魅力は薄くなってきているように感じます。

こんな時は「もう少し様子を見てから」というような便利な発想で意思決定を先送りしがちですが、最近の経済社会情勢では先送りしたところで不動産価格が落ち着いて収益性が高まる(利回りが上がる)とは限りません。もちろん不動産価格が上がるか下がるか、収益不動産の利回りが上がるか下がるかという先の予想はできません。

しかし、収益不動産の場合は、現在の賃料収入が決まっているため、数か月先、数年先までは、ある程度の収益の目途がたてられます。

このように、収益不動産の場合、数年後の物件の価格は予想できなくても数年間に得られる賃料収入は予測可能ですので、安定した賃料収入が得られることが見込める場合は、もう少し様子をみてからではなく、その時点で投資の意思決定をしても大きな失敗はありません。

 

例えば、現在購入を検討している収益不動産の利回りが概ね3%前後だとして、もう少し、3年、5年と世の中の様子を見れば価格も下がり4%、5%になるかもしれないし、ならないかもしれません。しかし様子を見ずに、今、意思決定した場合、ほぼ確実に予測可能なのは投資額(収益不動産の購入額)に対して1年間で3%の賃料収入が見込めることです。3年間では合計9%、5年間では合計15%の賃料収入が見込めます。ということは3年後に物件価格が9%下落したとしても、5年後に15%下落したとしても損はしていないという事になります(税金等を考慮しないあくまで表面上の考え方です)。

もちろん数年後の売却を前提にしていなければ、不動産の投資利回りが低くても、早期に投資し、長期で運用すれば、賃料収入によって投資額を回収していきますので損をすることはありません。

したがいまして、特にインフレ基調である現在は不動産投資において、不動産価格や利回りを気にして、しばらく様子を見ようという発想はあまり意味をなしません。むしろ重要なのは物件の立地や建物の築年数、用途、テナント属性など、安定収入を得るための要素です。

「もう少し様子をみてもいいと思うよ。」問題先送りの無責任で便利な言葉ですが、微妙な人間関係では、もう少し様子をみたほうがいいこともありますよね。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)