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底地・借地権

「基準地価回復」地方に波及

令和5年の基準地価が公表されました。

基準地価とは土地取引の目安となる価格で毎年7月1日時点の価格を都道府県が調査し、国土交通省が9月に発表します。同じ指標として公示地価がありますが、こちらは毎年1月1日時点の価格ですので、7月1日を基準とする基準地価は、半年間の地価の動きを補完する役割があります。すでに今年の公示地価が発表されていますので、地域ごとの地価の動きは概ね想定通りではないでしょうか。

 

 

基準地価に限らず、公示地価や路線価などの公表は、地価動向をとらえる大きなくくりとして、全国、三大都市圏、地方圏と分けています。非常に大雑把なくくりだとは思いますが、今年の地価動向は、全国の全用途平均で上昇率が前年より大きくなった。三大都市圏は前年より更に大きな上昇率となった。さらに今年は地方圏も上昇となり、全国の44.7%の地点で上昇が確認されたとのことです。

 

三大都市圏の地価動向は日頃の肌感覚どおりですので余計な考察はさておき、地方圏が全用途平均で上昇したというのは、表現としては少し大袈裟というか適正ではありません。というのも地方圏の上昇は、そのほとんどが札幌、仙台、広島、福岡の4市によるもので、その他の地方、すなわち本当の地方圏は横ばいもしくは下落しており、平成バブル以降32年連続下落という自治体も珍しくはありません。新聞には別冊で全国の基準地価の一覧が掲載されておりますが、前年対比1㎡あたり1千円上がった、下がったというのを見ると、実態はほとんど取引事例もなく、全体的な雰囲気でなんとなく1千円上げてみた、下げてみた、という担当者の苦悩が目に浮かぶようです。このようなことから、地方圏において公的地価はあまり意味をなさないのではないかとも思いますが、土地の需要が少なく、取引の事例がないからこそ逆に公的地価が一つの目安になるという役割を果たしているのもまた事実です。

 

公示地価、路線価、基準地価と毎年価格が公表されますが、今後もますます顕著になるであろう地価の二極化や、不動産価格の考えそのものが、土地価格だけではなく、建物建築を前提とした利用価値、収益価値が最重視されていることを鑑みますと、公的地価の役割も終えつつあるのではないかと思います。

 

しかし、土地の価格が上がると景気がいいような雰囲気になりますが、土地の価格が上がって喜ぶのは一体誰でしょう。地主でしょうか、不動産業者でしょうか、やはり、地価上昇により固定資産税や相続税贈与税、譲渡所得税などの税収が増える国なのでしょうか。

いずれにせよ地価上昇の恩恵をあずかれるのはごく一部に限られますね。

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

 

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