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賃貸経営

「民法改正を考える」その1

1.民法改正問題

2017年(平成29年)6月2日に公布された民法(債権法分野)の大規模改正の施行日が、いよいよ今年4月1日に迫っております。今回の民法改正については、様々な媒体で周知されていますので、既にご存知の方も多いと思いますが、借地借家との関係では極めて大きな影響のある法改正となっていますので、改めて本コーナーでも取り上げたいと思います。今回の民法改正において、借地借家と関わる改正事項は多岐に渡りますが、初回は、そのうちでも特に影響が大きいと思われる保証制度の改正を取り上げることにいたします。

 

2.保証制度の改正

⑴ 保証人の責任範囲の制限

改正法では、保証契約の締結後に「債務の目的又は態様」が加重された場合には、保証人の負担は加重されないとされました。そのため、不動産賃貸借において、契約期間中に賃料を増額した場合、保証人へは賃料の増額分について請求できないことになる可能性が生じます。こうした懸念への対応としては、予め保証契約において、保証人は賃料増額の場合にも増額分も含めた責任を負う旨を明確にしておくべきことになるでしょう。

 

⑵ 個人保証人の保護

これまで不動産賃貸借における保証では、主債務の範囲・金額を限定せずに将来発生する賃料等を包括的に保証する「根保証」という形式がとられるのが通常だったと思います。不動産賃貸借における「根保証」について、現行法では特段制限は設けられていませんでしたが、改正法では、個人による根保証全般について、「極度額」(保証額の上限)を定めることが義務付けられました。当該義務に違反した保証契約は無効となりますので、この点注意が必要です。また、事業用の不動産賃貸借においては、主債務者(賃借人)が個人保証人に対して、財務状況等の情報提供をすることが義務付けられています。主債務者(賃借人)に当該義務違反があり、債権者(賃貸人)が当該義務違反の事実を知り得た場合には、保証人は保証契約を取り消せることになっています。そのため、今後は、保証契約締結時に、主債務者(賃借人)による提供情報が真実である旨の「表明保証」や、個人保証人が当該情報提供を受けている旨を書面により明確にしておく等の対応をとるべきことになるでしょう。

さらに、主債務者(賃借人)又は個人保証人が死亡した場合等について、根保証の元本が確定するものとされ、元本確定以降に発生した債務については保証人(又はその相続人)に請求できないことになりました。そのため、賃貸借契約の当事者に相続が発生した場合等には、新たに保証契約を早期に締結し直す等の対応が望ましいといえます。

 

⑶ 結びに

このように、保証制度は、保証人(特に個人保証人)の保護を重視した改正がなされており、債権者(賃貸人)の立場からは非常に制約が多くなっているのが実情です。そのため、今後の賃貸リスクを担保するための手段として、保証会社等の法人保証の積極的利用の検討が必要となってゆくものと考えられます。

 

(著者:弁護士 濱田)

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