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不動産売買

立ち退きをお願いする前に

相続税を納付するために不動産を売却しなければならない。よくある相談です。

複数ある不動産の中から、どの物件を売却するか悩ましいところですが、考え方の基本は、必要性の低い不動産を売却するということです。

必要性の低い不動産とは、遠隔地であったり、収益性が低かったり、建物の老朽化などにより維持管理が煩わしい不動産などです。このような必要性の低い不動産はまた、何かしらの原因によって売却しづらいというのが大体の相場です。それがゆえに、必要性が低く、何かがあれば売却したいと思うのも当然でしょう。

 

 

 

相続する不動産は、自宅とその周辺の駐車場や賃貸不動産、都心部の区分所有マンションの数戸、そのほか、隣町の古い木造の賃貸店舗兼住宅です。

賃借人は同物件で30年理髪店を営み、2階に居住しています。特に家主との交流もなく、賃料も周辺相場に比べると高くはありません。まず、売却を検討するのはこの店舗兼住宅です。収益が低く、建物も老朽化しているため、思うような価格は見込めません。この物件の価値を高めるには、賃借人に退去してもらい、負担のない状態で売却することが望ましいのは頭では理解できます。しかしながら家主の都合で一方的に退去させることはできませんので、退去にかかる補償(立退料)は最低限提供しなければいけません。

 

しかも店舗の立退料は住宅とは異なり、その場所で長年営んでいるからこそ得られている収入、今後も得られるであろう収入を一定程度補償してあげなければなりませんので高額になることが想定されますし、協議が長期化したり、場合によっては紛争まで発展したりするかもしれません。やはり、このような必要性の低い不動産に限って売却の難易度が高くなる傾向になりますね

 

しかし、考えていてもことは進みません。が、やみくもに、売却するので退去してほしいというのも良い方向に進むとは思えません。本来の目的に立ち戻って考えると、不動産を売却することが目的であり、退去の要請はその手段の一つなのです。

したがって、賃借人には少し言い方を考えて「相続税を納付しなければならないので、借りていただいているこの物件を売却せざるを得なくなった。ついては、ずっと使ってもらっているし、今後も使ってもらいたいからこれを機に購入してはもらえないだろうか」と、お願いの方向を変えるだけで大分、交渉の入り口のハードルが低くなるといえます。

賃借人は長年その場所で商売を営んできたので、何とか慣れ親しんだその場所にとどまる方法を考えます。長年の商売の蓄えがあるかもしれませんし、子供の援助を受けて購入するかもしれません。また、購入できなくても、これを機に商売をたたんで息子家族と同居するということになるかもしれません。

 

このように、話の順番や方向を少し変えることによって、よい展開に進む可能性もありますし、逆に、最初のボタンを掛け違えただけで、紛争になることもあるのです。

これは実際に私が取り組んだ事例です。

賃借人は、借りている土地建物を購入し、しばらく商売を続けたのちに息子と一緒に建て替えるとのことでした。

めでたしめでたし。と、すべてがこのように上手く進むとは限りませんが、利害の相反するもの同士でも、まずはめでたい結末を迎えられるよう常に意識したいものです。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

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