どんな人が買うのか(土地の相場観)
不動産の売却を検討する場合、やはり気になるのは価格です。
いくらで売れるのか、不動産業者に相談する前に、新聞広告やインターネットでおおよその近隣相場を調べる人も多いのではないでしょうか。
土地の場合、まず、参考とするのは周辺の売り出し価格です。
ただし、売り出し価格だけを見ても相場はわかりません。売り出されている土地の面積と価格との関係、すなわち㎡単価、坪単価がいくらで売りに出されているか電卓で計算することが重要です。
加えて、売り出されている土地の前面道路に付されている公的価格(通常は路線価、その道路に面した土地の㎡当たりの価格が公表されている)と、売り出されている土地の単価との相関関係を調べます。このような事例をいくつか調べることによって、そのエリアの売り出し価格と路線価との関係が見えてきます。
例えば、この地域は概ね路線価の1.5倍前後で売りに出されている、というような感覚、これが相場観です。ただし、土地というのは大きさや土地の形などによって単価に大きな影響を及ぼしますので、いくつかの事例のうち、単価が極端に低いもの、高いものについては事情を考えてみる必要があります。よくよく調べてみると、極端に間口が狭かったり、土地に高低差があったり、極端に広かったり、狭かったり、敷地図をみると大体その理由はわかるものです。
また、その地域の環境、特性を地図や、実際に歩いて観察することも重要です。
この地域では、どのような規模の土地、どのような規模、用途の建物が多いのか、不動産の傾向、町の傾向、特徴を観察するということです。
例えば、この地域では概ね30坪前後の、ほぼ整型な土地に2階建ての住宅が建っているという傾向がつかめれば、その規模の土地がその地域の標準的な土地となり、これを基準に土地面積が大きい、小さい、土地の形が整型、不整型かによって価格のプラスマイナスのイメージをつかむことが可能です。
前述の路線価を基準とした相場観と合わせて考えると、この地域では30坪前後の土地が路線価の1.5倍前後で売りに出されている。(売れている)ということがつかめます。これをエンドユーザー(最終消費者)価格といいます。
このような地域で100坪の土地を売却しようと考えた場合はどうでしょうか。
地域の標準的な規模より大きくなるため、想定される買主は、土地を3分割、もしくは4分割に分けて宅地(建売)分譲する不動産業者ということになるでしょう。前述した地域の相場観で考えますと、3分割後の土地が路線価の1.5倍で売れるという計算が成り立ちます。不動産業者の仕入れ、販売経費、造成費、利益などを考えると、エンドユーザー価格、すなわち路線価の1.5倍の価格の2割から3割減額された金額がこの土地のおおよその相場ということが言えます。これは単に不動産業者だから安くなる、ということではなく、この地域でこの規模の土地はエンドユーザーではなく不動産業者(分譲業者)が想定される買主であるということです。
以上が土地の相場観の基本的な考え方です。
とはいいながら、土地は同じものが2つとありません。したがって、相場といいつつも、個別の事情によって、いくら出してもいいから、その土地が欲しい、その土地じゃなければダメなんだ、という人がいるかもしれません。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)