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底地・借地権

新・借地借家を巡る諸問題⑧ 賃貸人の地位の相続

1 はじめに

個人で所有する土地や建物を賃貸している場合、契約期間の途中で賃貸人が亡くなると、賃貸借の目的とされている不動産の所有権とともに、賃貸人の地位が相続されることになります。

特に土地の賃貸借の場合は、その契約期間が数十年と長期間に渡るため、契約期間の途中での相続発生も、珍しくありません。

不動産賃貸借の当事者が契約途中で亡くなってしまった場合の法律関係は、色々と難しい問題を含んでいますが、今回は、賃貸人に相続が発生した場合について、整理していただきたいと思います。

 

 

 

2 賃貸人の地位の相続

 

⑴ 相続の発生

不動産賃貸借における賃貸人が、契約期間の途中で亡くなった場合、賃貸人の地位は、対象不動産の所有権に付随して相続されることになり、相続人が複数存在する場合は、原則として共同相続人全員で法定相続分に応じて対象不動産を共有し、それに付随する賃貸人の地位を準共有することになります。

不動産賃貸借における賃貸人の地位の移転は、賃借人にとって特に不利益を生じるものではないため、相続による場合に限らず賃借人の承諾は不要とされていますが、賃貸人の地位の移転を賃借人に対して対抗(主張)するためには、所有権移転登記を経由することが必要となります。

 

⑵ 賃料債権の承継

対象不動産が共同相続された場合、不動産賃貸借に基づく賃料債権は、各共同相続人が、共有持分に応じて分割して承継(相続)することになるため、各共同相続人は、自分の相続分を超える金額を賃借人に請求することはできないことになります。

もし、共同相続人が賃貸人の地位を準共有している状態で賃料の未払いが発生し、共同相続人が当該賃貸借契約の解除を検討することになった場合、共有物を目的とする賃貸借契約の解除は、共有物の管理に関する事項に該当するとするのが判例の立場ですので、その是非は、各共同相続人の持分の過半数で決することになります。

 

⑶ 遺産分割協議があった場合

対象不動産について、共同相続人間で遺産分割協議がなされ、特定の相続人が対象不動産を単独承継(相続)することになった場合は、それ以降、当該相続人が単独の賃貸人ということになります。そして、遺産分割協議成立以降の賃料は、単独の賃貸人となった相続人が、全額を賃借人に対して請求できることになります。

これに対し、相続発生後遺産分割協議成立までの間の賃料債権は、遺産分割協議により何らかの影響を受けるのでしょうか。この点については、共同相続の対象となった不動産から生じる賃料債権は、遺産とは別個の財産として各相続人がその相続分に応じて分割債権として確定的に取得し、後になされた遺産分割の影響を受けないとするのが判例の立場ですので、遺産分割前の賃料については遺産分割協議による影響を受けず、単独の賃借人となった相続人も、遺産分割協議成立前の共有持分を超える分の賃料請求はできないのが原則となります。

ただし、実務上は、相続発生後遺産分割協議成立までの賃料債権も含めて、遺産分割協議を行うことも可能とされています。

 

3 まとめ

賃貸借契約の当事者が契約途中で亡くなり相続が発生するということは、それほど珍しいことではないと思いますが、賃貸人の相続の場面と賃借人の相続の場面のいずれにおいても、色々と難しい問題を含んでいます。

そうした場合、慎重な対応が求められることも少なくありませんので、疑問があるようなときには、弁護士等の専門家へご相談いただいたうえでの対応が望ましいといえるでしょう。

 

(著者:弁護士 濱田)

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