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賃貸経営

新・借地借家を巡る諸問題⑪_建物賃料不払いへの対応(強制執行)

1 はじめに

本コーナーの本年第7回で、建物賃料不払いへの対応を取り上げましたが、賃料不払いへの対応として不払い賃料請求や建物明渡請求をしたとしても、賃借人が任意に履行しない場合には、最終的に強制執行手続の検討が必要となってきます。

今回は、建物賃料不払いへの対応における強制執行手続について、整理したいと思います。

 

2 不払い賃料請求

⑴ 債務名義の取得

不払い賃料請求に対し、賃借人が任意にこれに応じない場合、強制執行手続の検討が必要となります。

不払い賃料のような金銭債権請求の強制執行手続としては、賃借人の財産(不動産、動産、債権)を差押える方法がありますが、その前提として賃貸人は、裁判手続による判決等の「債務名義」を取得することがまず必要となります。

 

 

 

⑵ 差押え

判決等の「債務名義」を取得した賃貸人は、裁判所へ賃借人の財産(不動産、動産、債権)の差押えを申し立てることができます。

差押えが奏功した場合、不動産については「強制競売」、動産については「入札又は競り売り」、債権については「第三債務者からの取り立て」といった方法により、換価・回収がなされることになります。

賃借人が複数の財産を保有する場合、賃貸人は、どの財産を差押えの対象とするか、任意に選択することが可能ですが、不動産を差押えの対象とする場合は、「強制競売」のために裁判所へ納める予納金が数十万円単位の高額に上り、どんなに早くても半年以上の期間を要することが通常なので、そうした点には留意が必要です。

 

⑶ 財産開示手続

差押えの手続は、賃借人が実際に財産を保有していなければ奏功しない訳ですが、差押えの対象とする賃借人の財産は、差押えを行う賃貸人側で調査・特定をする必要があります。

賃借人の保有財産の調査方法としては、弁護士法に基づく「弁護士会照会」や、民事執行法に基づき債務者(賃借人)を裁判所へ出頭さ保有財産を自ら開示させる「財産開示手続」があります。

この点、従前の「財産開示手続」では、債務者(賃借人)が保有財産の開示応じなかった場合の罰則が軽微で、あまり実効性がなかったのが実情ですが、民事執行法の改正により、令和2年4月1日から刑事罰が新設される等して罰則が強化され、また、地方自治体や金融機関等の第三者から債務者(賃借人)の財産に関する情報を取得する手続が新設され、手続の実効性が強化されました。

 

3 建物明渡し請求

⑴ 債務名義の取得

賃貸人が建物賃料不払いにより賃貸借契約を解除し、建物明渡しを求めたのに対し、賃借人がこれに任意に応じない場合、賃貸人としては、やはり強制執行手続を検討することになります。

建物明渡しの強制執行手続の場合も、賃借人は、裁判手続による判決等の「債務名義」を取得することが必要となりますが、不払い賃料請求と建物明渡し請求の「債務名義」は、同一の裁判手続による同一判決等で兼ねるのが通常です。

 

⑵ 建物明渡しの催告・断行

裁判所へ建物明渡しの強制執行の申立てがなされると、当該建物の所在地域を担当する執行官が、まずは賃借人に対し建物を任意に明け渡すよう明渡期限を定めて「催告」し、それでも賃借人が任意の明渡しに応じない場合は、強制的に建物内の荷物を搬出して明渡しを「断行」することになります。

なお、建物明渡しの強制執行(催告・断行)費用は、数十万円単位の高額に上る場合も少なくありません。当該費用は、まずは賃貸人側で負担することが必要となり、最終的には賃借人へ請求することも可能ですが、実際には回収困難な場合が多いため、この点についても留意が必要です。

 

(著者:弁護士 濱田)

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