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底地・借地権

新・借地借家を巡る諸問題⑦ 建物賃料不払いへの対応

1 はじめに

新型コロナウイルス感染拡大は未だ終息の気配はなく、第二波、第三波も懸念される状況が続いています。

建物賃料等に対する公的支援の施策も、ようやく具体化してきましたが、全ての事業者・個人が十分な支援を得られる訳ではなく、建物賃料問題は今後更に深刻化してゆくことが懸念されます。

前回は、建物賃料の減免・猶予について取り上げましたが、最終的に賃借人が賃料支払に窮し、賃料不払いが発生することも想定されます。

今回は、建物賃料の不払いが発生した場合の、賃貸人の具体的対応と留意点について、整理したいと思います。

 

 

 

2 不払い賃料の請求

⑴ 賃借人への請求

弁護士に持ち込まれる案件では、長期間に渡り不払いが続いているケースも珍しくありませんが、賃貸人としては、賃料不払いが発生した場合、出来るだけ早いタイミングで請求を行うことが肝要です。賃貸人からの請求が厳しいと感じられないと、金銭的に余裕のない賃借人は他の支払いを優先するようになり易く、結果、不払いが積み重なって高額となり、敷金や保証金でカバーできない状況にもなりかねません。

そして、賃料請求に対する任意の支払いがなされない場合は、裁判手続による請求を検討することが必要になります。なお、建物賃料の消滅時効期間は、5年です。

 

⑵ 連帯保証人への請求

建物賃貸借では、連帯保証人がいる場合が多いと思いますので、賃料不払いが発生した場合には、連帯保証人に対する請求も検討すべきことになります。

そして、賃料不払いが長期間に渡るような場合には、それを放置した賃貸人から連帯保証人への請求を制限する裁判例もありますので、連帯保証人に対する請求も、賃借人に対するのと同様に、早めのタイミングで行うことが望ましいといえます。

なお、連帯保証人に対してのみ請求を行っても、賃借人への請求を行わなければ、消滅時効の完成猶予の効力が生じない(時効期間が進行してしまう)ので、その点は注意が必要です。

 

3 契約解除と建物明渡し

⑴ 契約解除

賃料不払いが続く場合、賃貸人としては、賃貸借契約を解除して、賃貸借契約を終了させることも必要となってきます。

裁判実務では、3ヶ月分の賃料不払いがないと、賃貸借契約の解除が認められない場合が多いのですが、3ヶ月分の賃料の不払いが生じているような場合には、賃貸人としても、賃貸借契約の解除を検討すべき段階にあるといえます。

⑵ 建物明渡し

賃料不払いを理由に、建物賃貸借契約を解除した場合、賃貸人は賃借人に対し、建物の明渡しを求めることになります。

そして、建物明渡しが任意に履行されない場合には、やはり裁判手続による明渡請求を検討することになります。

 

4 賃貸人の留意点

不払い賃料や建物明渡しは、裁判手続を経ても賃借人が任意に履行しない場合には、最終的に強制執行の手続が必要で、いずれの手続費用も、一旦は賃貸人側で負担することになるのが通常です。これら手続費用は、最終的に賃借人へ請求することも可能なのですが、賃料不払いをするような賃借人から金銭を回収することは難しいのが実情です。

そのため、出来るだけ損失拡大を抑えるという観点からも、賃料不払いに対しては、不払い額が高額化する前の、早期の対応を心掛けていただきたいと思います。

 

(著者:弁護士 濱田)

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