home > 協会コラム > 底地・借地権

底地・借地権

不動産における利害関係(嫌いだからこそ あえて縁を切らない)

嫌な相手、苦手な相手とはできるだけ関係をもちたくないものです。

嫌な相手が利害関係人であれば、できれば関係を解消したいと考えるのが普通の人です。では、不動産の場合はどうでしょうか。

不動産における利害関係人とは隣人や、大家と店子(テナント、入居者)、地主と借地人などが主なところですね。

 

 

 

 

まず、不動産における隣人との関係は、特に資産価値に影響するので重要です。

お互いの土地の境界や越境物など、隣人と紛争状態であったり、そこまでいかなくとも相手から協力が得られない関係であれば売却する際の換金価値は下がってしまいます。それでも当人とすれば売却することによって嫌いな隣人と縁が切れ、関係が解消できることを考えれば精神衛生上はよいと言えるでしょう。

 

大家と店子の場合はどうでしょうか、賃料を滞納する、騒いで周囲に迷惑をかける、共用部分の利用やゴミ出しのルールを守らないなどという不良入居者がいる場合は、他の良質な入居者までもが退去し、収益に悪影響を及ぼす可能性が高いので、費用をかけてでも退去してもらい関係を解消すべきでしょう。

では、地主と借地人の場合はどうでしょう。地代や更新料などを巡って地主に権利主張ばかりしている。そればかりか更新料は支払う必要ない、などと他の借地人を巻き込んでまでして地主に権利の主張をする。このような借地人とは早く縁を切り関係を解消したいものです。このような借地人との関係を解消するためには土地を売却するよりほかありません。

反対に借地人も地代の支払いや値上げ、更新料、各種承諾料などの経済的な面と、交渉など人間関係の煩わしさから、地主との関係を解消したいと考えているため地主から土地を購入したいというのが本音です。売却によって互いの煩わしい関係が解消しますので双方にとってはメリットです。

 

と、ここまで考えるのはごくごく普通の思考回路です。しかし、借地の場合、嫌な相手だからこそ土地は手放したくないと考える地主が多いのも事実です。

それは土地の売却は借地人が最も喜ぶことだからです。借地人は土地の購入により財産価値があがり、地代の支払いも、各種承諾料、更新料も支払う必要がありませんし、更に地主という最も気を遣う相手がいなくなります。地主はこれを逆手にとって借地人に土地を売却せず、借地の関係を継続することによって、借地人が借地権を売却するときや、建物の建て替え、増改築をする場合などの承諾を拒んで困らせることが可能になります。この段になって初めて地主とは仲良くしておくべきだった、と後悔しても時すでに遅く、地主にとってはこれまでの仕返しというところでしょうか。

これが、嫌な借地人との関係を継続する大きな目的ですが、地主にとっても関係を継続することは相当なエネルギー、ストレスがかかることも事実です。

 

諸々考えると、何だかんだ言いながらもぐるっと回って嫌な相手、苦手な相手とは関係を解消するのが一番ではないでしょうか。

嫌な借地人には少し位高い値段を提示しても手切れ金と思えば購入してくれる可能性は高いでしょう。こんなところが理屈や経済合理性ではない不動産の難しいところです。

「人間だもの。」

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

ご相談窓口

まずは、お電話、お問い合せ・ご相談フォームより、お越しいただく日程を決めさせていただきます。
※東京近郊にお住まいの方は、協会事務所までお越しいただき、詳細に相談をお受けいたします。

お電話でのご連絡

  • 新宿本部

    03-3320-6281
  • 横浜オフィス

    045-620-3701

お問い合せ・ご相談フォームからのご連絡