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底地・借地権

無断譲渡とは気づかずに無断譲渡(会社分割と合併)

来月から地代の振込名義が変わります。との連絡を受けて、何事かと確認したところ、土地を賃借している法人(借地人)が、地主に無断で「会社分割」を原因とし、借地上の建物の所有権を移転してました。

借地人に説明を求めたところ、顧問税理士を伴い「経営戦略上の判断で会社分割を行った。支配権その他実態は変わらない」との事です。要するに実態は変わらないので無断譲渡ではないとの主張のようです。

 

 

 

いずれにしても理由はともあれ地主に無断でこのような取引をすることは賃貸借の基本である信頼関係の観点から問題といわざるをえません。

賃貸借契約は人と人との約束事ですから、相手が誰であるか、ということが重要であり、相手方との信頼関係のもと成り立っています。したがって借地借家法では相手方である借主を無断で変更されては困るので賃借権の譲渡には必ず地主の承諾が必要となっているのです。

 

本件はまず、借地権の無断譲渡に該当するのかが問題となるわけですが、賃貸借契約の基本を考えますと、確かに相手方が実質的に変わらなければ譲渡には該当しないという解釈が成り立ちます。法人の場合は実質的支配権、すなわち株主に変更がなければ商号変更や役員変更があったとしても、重要な意思決定機能には変更ありませんので、実質的には変更がないとも解されます。

しかし、会社分割に伴う賃借権の譲渡について、東京地裁平成10年2月23日の裁判例によると「会社分割の当事者間は密接な関係があることが多いことから実質的には賃借人の変更がないとの考えもあるが、たとえ密接な関係があるにしても別法人に変わりがないことから賃借権の移転があったと認められる。したがって賃貸人の承諾なくして分割範囲に賃借物件を含む会社分割を行った場合、賃貸借契約の解除を主張することができる」との判断がなされました。

このことからも本件は「無断譲渡」であり、借地権の解除事由にもなりうるとも考えられますが、現状では堅固な建物が存し、地代などの遅延もないことから現実的には解除ではなく、承諾料の請求という事が実務的な妥協点です。これは会社分割に限らず、合併や株式譲渡(M&A)なども同じことがいえます。表面上の商号が変わらず実質的な支配権が変わるケースでは客観的な判断が難しいところです。

また個人では相続対策と称して子や孫に借地上の建物を生前贈与したり譲渡したりすることも同じです。いずれにせよ悪気はなくとも事前に地主に相談することが第一です。

 

本件も、順番さえ間違わずに事前に地主への説明さえあれば形式的な承諾で済んだと思われる事案です。

また、税、会計の専門家も節税や経営戦略以前にこのような基本的な法解釈と取引実務を理解していないとお客様の財産を毀損させることにもなりかねません。昨今のM&Aブームによる資産移転でも注意が必要な点の一つですね。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

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