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相続

認知症と法人経営

◎認知症に備えていますか?

内閣府「平成29年版高齢社会白書」の中で、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると推計されています。認知症はもう誰にとっても身近な問題となりました。

財産管理や相続対策の観点からの認知症への対処としては、「成年後見制度」や「家族信託」などがあります。では、法人の経営者が認知症になった場合(例えば社長兼株主が父親で、そのほとんどの財産を法人所有にしているような場合に父親が認知症になったら)、どのような問題が出てくるでしょうか。

 

◎すぐに代表権に影響が出るわけではないものの

一言で認知症といっても、軽度から重度まで程度は様々です。

認知症が直ちに役員としての欠格事由にあたるわけではありませんし、金融機関も、社長が認知症になったからといってすぐさま借入金の一括返済を求めてくるわけではありません(ただし新たな融資は受けにくくなると考えられます)。一般的に症状は徐々に進行していくものですので、まずは正常な意思表明ができるのかを本人や家族が見極め、初期段階から後継者育成をはじめとする対策を意識し実行していく必要があります。

 

 

 

◎契約行為や日常生活に支障が

認知症が疑われたとしても、軽度であれば契約行為は有効になる場合もありますが、判断能力に不安がある状況下での契約には相当のリスクが伴います。かといって、親族による契約の代行はご法度です。

日々のお金の引き出しなど、身近なところにも懸念が生じます。また、そういう状況下で財産が1人に集中していることも高リスクですが、情報も同じです。いざというとき、家族や後継者は待ったなしで諸々の処理をしていかなければなりませんから、取引口座や取引先担当者等の情報は早いうちに整理し共有しておきたいところです。

 

◎成年後見の開始は慎重に

認知症が即、役員の地位に影響するわけではないと書きましたが、法定後見制度による後見・保佐の開始は役員の欠格事由になりますので、経営からは退かざるを得ません。また、成年後見人は家庭裁判所が決定するため、本人や家族が希望する人(後継者)がなれるとは限りません。つまり会社(家族)に「異物」が入ってくる可能性も排除できないわけです。

一方、元気なうちに任意後見契約を結んでおけば、法定後見よりは本人の意向を反映させやすくなりますが、それでも後見監督人の関与は受けます。会社経営(資産管理)とあまり相性がよくないことに変わりはありません。

 

◎家族信託も万能とはいえない

そこで家族信託が登場してきます。家族信託は、株式に付帯する権利を区分して権利行使者を設定できるなど、柔軟な事業承継に役立ちます。ただし、本人の身上監護の機能がない(例えば受託者が本人に代わって介護施設と契約することはできない)など、後見制度で補完すべき部分もあります。家族関係にもよりますが、任意後見を併用しておくことも検討すべきでしょう。後見も信託も一長一短がありますので、後悔しないよう信頼できる相談相手を探すことが先決です。

 

最後に、認知症になると本人や家族が好むと好まざると介護の必要性が出てきますが、介護はその後の相続に大きく影響します。相続まで意識するなら、介護を誰が担うか、介護にいくらかかるか等を考えるのもお忘れなく。

 

(著者:税理士 高原)

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