相続税・贈与税の改正 110万円の暦年贈与について
「年間110万円までを子供や孫に贈与した場合に、贈与税がかからない」という制度を一度は聞いたことがあるかと思います。
実は、この制度が2024年1月1日から一部内容を変更して、施行されることになりました。変更点は以下の通りです。
【変更点】
生前贈与の相続財産の加算期間が3年
⇒7年に変更
従来の制度では、被相続人が亡くなる前3年以内の贈与については、相続財産に加算されておりました。
今回の変更で、被相続人が亡くなる前7年以内の贈与について、相続財産に加算されてしまうという内容です。
これは、「持ち戻し」といって、相続発生前の一定期間内の生前贈与については、相続財産に戻して、相続税を計算するルールになっているのです。死期を悟ってからの駆け込み贈与を防ぐために設けられました。
今回の変更で、4年分の贈与部分が相続財産に加算されてしまうので、事実上の相続税の増税といえると思います。
元々、当該暦年贈与の変更案として「持ち戻し」の延長が議論されており、むしろ、「暦年贈与の廃止」案もありましたので、7年分の「持ち戻し」に決着したことは、ある意味よかったかもしれません。
海外に目を向けると、この持ち戻し期間が、イギリスは7年、ドイツ・韓国は10年、フランスは15年となっていますので、我が国日本より厳しい国があるのです。
【相続時精算課税制度の変更】
当該制度は、60才以上の祖父母や親から18才以上の子や孫への贈与を対象に、累計2,500万円まで非課税になる(贈与税がかからない)制度です。
この制度のデメリットとして、上記の「110万円の暦年贈与が使えない」ことがありましたが、2024年1月1日施行から、相続時精算課税制度に 「110万円の基礎控除が使える」ことになりました。今後はこの「相続時精算課税制度」が相続対策として、注目されるかと思います。
【不動産をご所有のオーナー様へ】
相続税関連の法改正も多数あり、その改正に対応した相続対策を都度考えていかなければなりません。まだ、相続対策を始めていない方、相続対策は実施済みだけどもその後見直していない方は早めに、相続専門の税理士に相談することが必要かと思います。
まずは、軽い気持ちで当協会までお気軽にご相談ください。
(著者:理事長 不動産鑑定士 手塚)