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賃貸経営

「借地借家法を考える」⑦不動産賃借権の登記

1 はじめに

今回は、不動産賃借権の登記について取り上げます。

不動産賃借権は、土地賃借権(借地権)と建物賃借権(借家権)のいずれの場合も登記が可能ですが、実際に登記がされているケースは多くないと思います。しかし、不動産賃借権を登記することには、賃貸人側にも一定のメリットがない訳ではなく、ケースによっては登記を検討することが有益といえる場合もあります。この機会に確認整理いただければと思います。

 

2 土地賃借権(借地権)の登記

⑴ 借地権の設定

借地権を設定するには、地上権による場合と土地賃借権による場合とがありますが、地上権による場合、そもそも地主に登記義務があり、また、地上権(借地権)の譲渡に地主の承諾が不要である等、地主側のデメリットが少なくなく、実務上、賃借権による場合が多いと思います。

 

⑵ 土地賃借権の登記

借地権の設定が土地賃借権による場合も登記は可能ですが、地上権による場合と異なり地主に登記義務がなく、実務上、登記がなされないのが大半だと思います。

土地賃借権が登記された場合、賃借人は、借地権を第三者へ対抗することができるため、賃借人のメリットは大きいといえますが、借地借家法上、土地賃借人が借地上に登記された建物を所有する場合は借地権を第三者に対抗することができますので、賃借人にとって借地権自体の登記をする必要性は高くないといえます。

他方で、土地賃借権を登記することに、賃貸人(地主)側のメリットはあるのでしょうか。借地契約は最低でも30年以上の長期間に及ぶことになるため、借地権設定当初の契約書類等が紛失してしまうといった事態も十分想定されます。また、個人が賃貸人となる場合は、賃貸人が契約期間中に亡くなって相続が発生することも、そう珍しいことではないといえます。そうした場合、元々の借地契約の内容を確認・証明する手段がないといった不都合が生じる恐れがあります。特に、定期借地契約の場合は、当該契約に契約更新のないことや、存続期間がいつまでなのかを確認・証明できなくなってしまう事態も生じえます。

この点、土地賃借権を登記しておけば、賃料や契約期間の定めの他、当該契約に契約更新のないことも登記されますので、契約書類等紛失のリスクをカバーできるメリットがあります。

 

3 建物賃借権(借家権)の登記

建物賃借権についても、登記は可能ですが、土地賃借権以上に、登記が利用されるケースは多くないと思います。

建物賃借権が登記された場合、賃借人は、借家権を第三者へ対抗することができ、その点は賃借人のメリットといえますが、借地借家法上、建物賃借人は建物の引き渡しを受ければ借家権を第三者に対抗できますので、賃借人にとって建物賃借権自体の登記をする必要性は、借地権の場合と同様に高くないといえます。

他方で、建物賃借権を登記することに、賃貸人側のメリットはあるのでしょうか。建物賃借権の場合、契約期間が長期に及ぶことは多くないといえ、契約書類等紛失のリスクは一般的に高くないといえますが、長期間を定めた定期借家契約のような場合には、契約書類等紛失のリスクがやはり想定されます。そのため、定期借家契約の場合には、建物賃借権を登記しておくことに、一定のメリットがあるといえそうです。

 

4 おわりに

賃貸人として、全ての不動産賃借権について登記を検討する必要はありませんが、契約期間が長期に及ぶ場合、特に定期借地契約、定期借家契約の場合には、賃貸人側にも一定のメリットがありますので、不動産賃借権の登記を検討いただいても良いのではないでしょうか。

(著者:弁護士 濱田)

 

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