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賃貸経営

借地借家と相続

1 はじめに

借地・借家契約の途中で当事者が亡くなった場合、従前の契約関係は終了せず、相続人が契約を承継することになります。

相続に際しては様々なルールがあり、複雑な問題が生じることも少なくありませんが、今回は、相続が生じた場合の基本的な処理手順や注意点について確認したいと思います。

 

 

2 賃貸人の相続について

賃貸人が亡くなった場合、遺言が残されていればその内容に従って賃貸物件の取得者が決まりますが、そのような遺言がない場合は、相続人全員が賃貸物件を共有している状態となります。そのため、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産である賃貸物件の取得者を決める必要があります。

そして、賃貸物件を取得した者は、賃貸人の地位を承継することになりますので、従前の借地・借家契約がそのまま承継され、前賃貸人が預かっていた敷金も引き継ぎます。相続に伴って賃貸借契約書を作り直すことは必須ではありませんが、賃貸人の承継を明確にするために作成するケースも多いと思われます。

相続が開始した後、遺産分割協議で賃貸人が決まるまでの間に支払われた賃料は、各相続人が相続分に応じて確定的に取得するというのが判例の考え方ですが、各相続人が話合いによって別の取り決めをすることは可能です。いずれにしても、相続人全員の共有状態が続いているとトラブルが生じやすいので、相続開始後はできる限り早めに遺産分割協議を行うことが望ましいでしょう。

 

3 賃借人の相続について

賃借人が亡くなった場合も、特に遺言がない限り、相続人全員が賃借権を共有(準共有)している状態となりますので、この場合も遺産分割協議を行い、賃借権の承継者を定める必要があります。借地契約の場合は、遺産分割協議によって借地上の建物の取得者を定めることになるでしょう。

相続が開始した後、遺産分割協議で新たな賃借人が決まるまでの間は、各相続人が賃借人(共同賃借人)の立場となりますが、賃借人の賃料債務は不可分債務と解されているため、賃貸人は賃借人の一人に賃料の全額を請求することができます。

一方、賃料滞納等により契約を解除する場合は、原則として賃貸人から相続人全員に対して解除を通知する必要があります。なお、相続によって賃借人が変更しますが、相続による承継は賃借権の譲渡とは異なるため、賃貸人への名義変更料(譲渡承諾料)の支払は一般的に不要とされています。

また、一人暮らしの賃借人が急に亡くなり、身寄りの方もいない場合などは、賃借人の相続人が明らかでないことがあります。もっとも、賃貸人が一方的に契約を終了させて明渡しを実行するわけにはいかないので、まずは賃借人に関する戸籍調査を行い、相続人の不存在が判明した場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができます。相続財産管理人が選任されれば、契約終了の処理や土地・建物の明渡しについて協議することが可能となります。

 

4 まとめ

相続発生時の基本的な考え方は以上のとおりです。相続はいつか必ずやってきますので、相続開始後の処理手順やトラブル発生の可能性等について、この機会に一度確認してみてはいかがでしょうか。

 

(著者:弁護士 戸門)

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