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賃貸経営

第10回 借地借家法が適用されない契約

1 はじめに

土地や建物を貸す場合、一般的には借地借家法の適用が想定されますが、事情によっては適用されないケースもあります。

今回は、借地借家法の適用範囲と、適用されない場合のルールの違いについて確認したいと思います。

 

 

2 借地借家法の適用範囲

借地借家法は、①「建物の所有を目的とする」土地の賃借権、②建物の賃借権に適用されますが、下記の点が問題になることがあります。

 

(1)「建物」について

建物の一部でも、障壁等によって他の部分と区画され、独占的・排他的支配が可能であれば「建物」に該当します。そのため、他の部分と区画されていないレンタルスペースなどは借地借家法が適用されない場合があります。

駐車場や資材置き場として土地を賃貸する場合は、建物所有目的ではないので借地借家法は適用されません。

土地上にプレハブ構造の仮設建物が設置されていたケースで、建物所有目的が否定された裁判例もあります。

複合的な目的で土地を賃貸する場合は、何が主目的であるかによって取扱いが異なります。ゴルフ練習場の目的で広大な土地を賃貸した場合に、賃借人がその一部に事務所等の建物を築造・所有したとしても、主目的はあくまでゴルフ練習場であるため、建物所有2023目的は認められないとした裁判例があります。

 

(2)使用貸借について

借地借家法は賃貸借を対象としていますので、使用貸借(いわゆる無償貸し)については適用されません。

土地や建物を貸すときに、固定資産税等の必要経費を借主が負担することがありますが、この程度の負担に止まるのであれば使用貸借と評価されるでしょう。一方、借主がそれ以上の金額を支払う場合は、その支払名目にかかわらず賃貸借と評価される可能性が出てきます。

 

3 借地借家法との主な違い

(1)賃貸借の場合

借地借家法が適用されない賃貸借契約には、民法上のルールが適用されます。

契約期間を定めなかった場合(または定めていても解約権を留保した場合)はいつでも双方から解約申入れをすることができ、土地の場合は1年、建物の場合は3ヶ月が経過すると賃貸借契約が終了となります。

一方、借地借家法では、原則として賃貸人から中途解約することはできません。借家に関しては正当事由があれば中途解約は可能ですが、通常は立退料の支払が必要となります。

また、民法上は、契約期間が満了したときは当事者が更新を合意しない限り契約終了となります。もっとも、期間満了後に賃借人が使用収益を継続していることを知りながら賃貸人が異議を述べないときは、賃貸借契約が更新されたものと推定されます。一方、借地借家法では、契約期間の満了とともに更新されるのが原則であり、賃貸人は正当事由がない限り更新拒絶することができません。この場合も立退料の支払を要することが通常です。

 

(2)使用貸借の場合

使用貸借契約に該当する場合も、民法上のルールが適用されます。

貸主は、使用収益の目的を定めた場合は、その使用収益に足りる期間を経過すれば解約することができますが、それ以外の場合はいつでも双方が解約することができます。

使用貸借契約では、契約期間を定めた場合は期間満了によって終了し、使用収益の目的を定めた場合は借主がその使用収益を終えることによって終了します。また、借主の死亡によって終了する点も使用貸借の特徴です。

 

4 まとめ

土地や建物を貸すといっても様々であり、事情によっては借地借家法が適用されないことがありますが、その場合は解約や更新等についてルールが大きく異なります。そのため、借地借家法の適否について判断が微妙なケースでは紛争になりかねないので注意が必要です。

 

(著者:弁護士 戸門)

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