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賃貸経営

第3回 賃料改定の実務(前編)

1 はじめに

賃貸借契約の中心的な要素である賃料は、賃借人に対象物を使用・収益させる対価として支払われますが、その金額は賃貸借契約で取り決められます。

一度取り決めた金額は変更できないのが原則ですが、その後に事情が変更し、賃料を維持することが不公平となる場合があるため、借地借家法では一定の場合に賃料を改定(増額・減額)することが認められています。まず今回は、賃料改定の基本ルールを確認したいと思います。

 

 

 

2 賃料改定の要件

借地借家契約については、

①土地・建物に対する租税その他の公課の増減、

②土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、

③近傍類似の土地・建物の賃料との比較等により、現行賃料が不相当となった場合は改定することが可能とされています。

なお、一定期間賃料を増額しない旨の特約(賃料不増額特約)がある場合は増額請求できません。一方、賃料を減額しない旨の特約(賃料不減額特約)は、賃借人保護の観点から無効と解されています。

 

3 適正賃料の算定方法

「賃料」には、新たに賃貸借契約を締結する場合に成立する賃料(新規賃料)と、当事者間の継続的な賃貸借契約において成立する賃料(継続賃料)があります。

賃料を改定する場合は、継続賃料としての適正額を算定することになりますが、その算定方法としては、「利回り法」、「スライド法」、「差額配分法」、「賃貸事例比較法」があります(不動産鑑定評価基準)。

ごく簡単にご説明すると、「利回り法」は物件価格に対する期待利回りをもとに算定する方法、「スライド法」は経済指標の変動に合わせる方法、「差額配分法」は契約の内容・経緯等を勘案して適正賃料と現行賃料との差額を双方に配分する方法、「賃貸事例比較法」は類似物件の賃貸事例と比較する方法です。継続賃料は従前の賃料をベースに算定されるため、仮に近隣物件の新規賃料が高かったとしても、直ちに同等の金額に改定できるわけではありません。

また、不動産鑑定評価基準には記載されていませんが、借地の場合は、公租公課倍率法(固定資産税に一定の倍率を乗じる方法)が採られるケースも多く見られます。この方法は算定が容易であるため、協議や調停で賃料を改定する場合や、大体の目安を確認する場合などに用いられています。

なお、経済指標や租税公課の変動に応じて賃料を改定する旨の特約(自動改定特約)が定められることもありますが、合理的な内容であれば有効と解されているので、紛争防止のためには効果的な手段と思われます。

 

4 賃料改定の効果

賃料改定を請求した時から改定の効果が生じますので、後に改定賃料の金額が確定した場合は、請求時に遡って賃料が変更されることになります。増額請求の場合、賃借人は、増額賃料が確定するまでは自らが相当と考える賃料(現行賃料等)を支払っていれば良いので、賃貸人が増額請求した金額が支払われなくても直ちに賃料未払にはなりません。

一方、減額請求の場合、賃貸人は、減額賃料が確定するまでは自らが相当と考える賃料(現行賃料等)を請求できます。賃借人が一方的に減額した賃料を支払ってきた場合、不足分は賃料未払になりますが、未払分が相当高額にならない限り契約解除は難しいと思われます。

 

5 最後に

賃料改定の基本ルールは以上のとおりです。これを踏まえて、次回は実務上の賃料改定の手順や具体的な事例等についてご説明したいと思います。

 

(著者:弁護士 戸門)

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