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賃貸経営

第5回 賃借人から受け取る金銭(前編)

1 はじめに

賃貸借契約の締結時や継続中において、賃貸人が賃借人から受け取る金銭には様々なものがあります。

今回は、それぞれの金銭の意味や注意点などを整理したいと思います。

 

 

 

2 賃料

賃借人に目的物を使用収益させる対価として支払われるものであり、言うまでもなく賃貸借契約の中心的な要素です。

その金額は、投下資本の回収や近隣の賃料相場などを考慮して算出し、双方の合意によって取り決められます。もっとも、その後に経済事情の変動等があれば、契約途中でも賃料の改定を請求することができます(賃料改定の詳細は本紙3・4月号をご参照ください。)。なお、賃料の額が固定資産税に満たないような低額の場合は、賃貸借ではなく使用貸借(無償貸し)として取り扱われることが多いでしょう。

 

3 共益費

共同住宅やオフィスビルの全ての入居者が使用する共用部分(エントランス、エレベーター、通路、各種設備等)を維持管理するための費用で、管理費と言われることもあります。毎月の賃料とともに支払われるのが一般的です。

 

4 権利金

賃貸借契約の締結時に支払われる金銭であり、基本的に返還する必要はありません。慣習として認められているものであり、その法的性質は必ずしも明確ではありませんが、一般的には、賃借権という権利を設定する対価としての性質を有すると言われています。

特に借地契約を締結する場合に権利金が支払われており、その金額は地域によって異なりますが、場合によっては更地価格の6~7割程度あるいはそれ以上とされることもあります。

 

5 礼金

権利金と同様、賃貸借契約の締結時に支払われる金銭であり、基本的に返還する必要はありません。戦後の住宅不足の頃、住まいを貸してくれたお礼として支払われてきたものが現在も慣習として残っていると言われています。特に借家契約で支払われることが多く、これも地域によって異なりますが、賃料の1~2ヶ月分程度が一般的と思われます。

 

6 敷金

賃貸借契約を締結する際に、賃借人の金銭債務(賃料等)を担保するために預かる金銭であり、その基本的なルールは民法に定められています。賃貸人が預かった敷金は、賃貸借契約が終了して目的物が返還されたとき、あるいは賃借権が譲渡されたときに返還する必要があります。

借家契約が終了して建物が返還され、賃貸人が敷金を返還するときに、あらかじめ取り決めた金額を差し引いて返還する旨の特約を敷引特約といいます。本来、建物の通常損耗や経年変化による補修費用は賃貸人の負担ですが、これを賃借人に負担させる趣旨でこの特約を定めることがあります。もっとも、賃借人が個人消費者である場合は、差し引く金額が大き過ぎると消費者契約法に反する可能性があるので注意を要します。

 

7 保証金

敷金と同じく、賃借人の金銭債務を担保するために預かる金銭であり、基本的には敷金と同様のルールが適用されます。「敷金」は居住用物件、「保証金」は事業用物件で用いられることが多いように思います。また、賃貸借契約の終了時に一定の保証金が償却される場合や、契約更新時に一定の保証金が償却されてその都度追加の保証金を差し入れる場合もあります。

なお、事業用建物の賃貸借契約において、建設協力金(建物の建設資金)の趣旨で保証金が支払われることもありますが、その場合は上記と異なり、賃借人からの借入金としての意味を持つことになります。

 

8 終わりに

次回は後編として、賃貸借契約の更新時に支払われる更新料や、賃貸人の承諾を要する場面で問題となる各種承諾料の趣旨・注意点などをご説明したいと思います。

 

(著者:弁護士 戸門)

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