地価上昇が地主・家主に与える影響
先日、2025年の公示地価が発表されました。今年も都市部をはじめ全国的な上昇基調が続いています。地価上昇と聞くと、なんとなく良い事のように感じますが実際はどうなのでしょうか。
地価上昇が土地資産家に与える影響について考えてみます。

地価上昇によって土地資産家の保有している土地の総額、いわゆる時価総額は大きくなります。
しかし、地価上昇に連動して、固定資産税、都市計画税などの保有税も上昇しますので土地を維持する毎年の費用は増加します。
その増加分を補うためには土地や建物を貸して得られる賃料などを増額することが一つの対応策ですが、賃借人が賃料増額に素直に応じてくれるかは、それぞれの事情が異なるので何とも言えません。
また、地価上昇に連動して、相続税を計算する際の基礎となる路線価も上昇しますので、相続が発生した場合の相続税負担も大きくなります。
ただし、相続税納付のために土地を売却する際の価格も上昇していますので、納税に困るほどの影響はありません。土地資産家にとっては財産の多くが土地ですので地価上昇によって財産が増えたという実感が少なく、目に見える税金などの負担が増えることのほうの実感が大きいのではないでしょうか。
ならば地価上昇の恩恵を実感しようと土地を売却したとしても、売却によって得られた利益に対して税金が課せられます。
また、売却後の現金をそのまま保有していると、万一相続が発生した場合には、現金がそのまま評価され、路線価で評価された土地を保有している場合より多くの相続税を負担しなければなりません。
地価上昇時には、時価(売却後の現金)と相続税評価額(路線価で評価した土地)と比較したときに時価が相続税評価額をより大きく上回る傾向が強くなりますので、現金より土地で保有している方が相続税評価上は有利に働くことになります。したがいまして相続税のことを考えれば、土地を売却して売却後の現金を保有しているより、売却せずに、現金より相続税評価額の低い土地を保有していた方が結果的に有利になるということが言えます。
また、そもそも現金を多く保有している人は、このような経済情勢下では土地を購入するだけで相続税を引き下げることが可能となるということが言えます。
このように税金の観点などから考えてみますと土地資産家にとっては地価上昇による恩恵を実感することはあまりありません。
恩恵を実感するためには、思い切って土地を売却して、そのお金を使ってみるのも良いかもしれません。お金を使うことによって、経済も良い方向に循環し、使い方によっては人にも喜ばれるでしょう。そして、お金を使った結果、財産が減少して相続税も減少します。
地価上昇によって得られる恩恵をいろいろと考えてみましたが、やはり一番恩恵を受けるのは、いろんな名目で税金を徴収する国ということでしょうか。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)